令和2年12月7日(月)  目次へ  前回に戻る

そのうち、パトラッシュと天使さまが迎えに来てくださる。

寒くなってきました。寒いと朝起きるのイヤだし、仕事するのイヤだし、お風呂に入るのもイヤになってきます。夜中外で暮らしているひとは、たいへんだろうなあ。

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むかしむかしのことでございます。

戎夷(じゅうい)というひとが、斉の国から魯の国に行ったところ、

天大寒而後門、与弟子一人宿於郭外。

天大いに寒にして門に後れ、弟子一人と郭外に宿す。

たいへん寒い季節であったが、城門の閉まる時間に遅れてしまい、城外で一人の弟子とともに野宿することになってしまった。

寒いのはイヤな上に、

寒愈甚。

寒いよいよ甚だし。

夜になってどんどん寒くなってきた。

戎夷は弟子に向かって言った。

子与我衣、我活也。我与子衣、子活也。我国士也、為天下惜死。子不肖人也、不足愛也。子与我子之衣。

子の我に衣を与うれば我活(い)くるなり。我の子に衣を与うれば子活くるなり。我は国士なり、ために天下死を惜しまん。子は不肖の人なり、愛(お)しむに足らず。子、我に子の衣を与えよ。

「おまえさんがわしに衣を与えてくれれば、わしは明日の朝まで生きていられるじゃろう。わしがおまえさんに衣を与えてやれば、おまえさんは生きていられるじゃろう。さて、わしは一国を代表するような立派なひとである。わしが死んだら、天下のひとびとが惜しいことをしたと悲しむであろう。それに対し、おまえさんはただのダメ人間じゃ。誰も惜しむひとはおらん。ということは、おまえさんがわしに衣を与えるといいと思うぞ」

と。

なんという筋道の通った話でしょうか。

弟子は答えた。

夫不肖人也、又悪能与国士之衣哉。

それ不肖の人なり、またいずくんぞよく国士の衣を与えんや。

「そうなんです、ただのダメ人間なんです。どうしてそんな人間が、一国を代表するような立派な方だからといって、命と引き換えに衣を与えるようなことをすることができるでしょうか」

こちらも筋が通っているぞ。

戎夷太息歎曰、嗟乎、道其不済夫。

戎夷太息して歎じて曰く、「ああ、道はそれ済(すく)わざるかな」と。

戎夷は一つ大きな息をついて、嘆いて言った。

「ああ、道というものは助けてくれない、破滅に向かうものなのじゃなあ」

そして、

解衣与弟子、夜半而死。弟子遂活。

衣を解きて弟子に与え、夜半にして死せり。弟子は遂に活く。

衣を脱いで弟子に与えて、夜中過ぎに凍死してしまった。弟子の方はとうとう生き延びることができた。

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「呂氏春秋」恃君覧第八「長利」より。カルネアデスの舟板のような深みを持つのだろうか、いやただの笑い話なのかも・・・、と悩まされますが、続きを読むと、戎夷は、

達乎分、仁愛之心識也。故能以必死見其義。

分に達し、仁愛の心識(あきら)かなり。ゆえによく必死を以て義を見(あら)わす。

自分の役割をよく理解しており、仁愛の心が明白である。だから、必ず死ぬとわかっていても正義を行動に示すことができたのだ。

と称賛されていました。よし、みんながんばって正義を行動に示そう。

 

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