令和3年5月8日(土)  目次へ  前回に戻る

最近サル見てないなあ。

もうダメだ。やる気もないのだ。

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清の乾隆五十五年(1790)の進士、莱州府の知事となった船山先生・張問陶は詩と画にすぐれ、容貌がサルに似ているので蜀山老猿とも称した洒脱な人である。

府知事をしているとき、

有一巡検差回稟見。

一巡検の差回して稟見する有り。

「巡検」は知府の下にあって、辺境の様子などを見て回る下僚。もちろんいろいろ役得もあります。「見回り隊」とか「おまわりさん」と訳すとちょっとイメージ違うので、「巡検」のままにしておきます。

とある巡検と、個別に面会して報告を受ける機会があった。

報告を受けおわると、船山は言った、

太爺、一路辛苦然、風致頗佳。

太爺(たいや)、一路辛苦然たるも、風致すこぶる佳なり。

「おやじさん、ずいぶん苦労をかけているようだが、(府内の)様子はいいようだね」

すると、

「ありがとうございますぞ!」

巡検自捋其鬚、半跪。

巡検、自らその鬚(しゅ)を捋(ひ)きて、半ばひざまずく。

巡検は、自分で自分の頬ひげを引っ張りながら、半分まで膝を折ってお辞儀した。

そして、言うには、

卑職蒙大老爺恩遇、毎思報効惜年長。多留此鬚、不能傾身図報耳。

卑職、大老爺の恩遇を蒙り、つねに報効を思い、年の長ずるを惜しめり。多くこの鬚を留むるも、身を傾けて図報あたわざるのみ。

「やつがれ、大おやじさま(皇帝陛下)のご恩を蒙って生きてまいりました。いつも何とかご恩を返さねばならないと考えておりますじゃが、残念ながらこの年になってしまい申した。この頬ひげばかりが長く立派になってしまいましたが、どうやってもご恩を返すような働きができていないのでございます。

頬ひげをお褒めに与かりましたが、やつがれはこの頬ひげが憎いぐらいでございますわい」

一瞬面食らったが、

「ああ、そうか。うん、うん。もうよろしい」

船山は世間をよく知ったおとこであったから、巡検を気分よく下がらせたあと、ひとりで

大笑。

大笑せり。

大笑いした、ということである。

・・・何がおかしいのだ。一生懸命やっている人を笑うとは、怪しからん。わしなんかやる気もないのだぞ。

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「古今筆記精華」巻十八「趣事」「憎鬚」(鬚を憎む)という題で記載されていました。同書は民国三年に古今図書局が多くの著作から、「史談」とか「風俗」とか「文士」とか「妓女」とか24の項目に分けて「精華」と思われるような重要(おもしろい?)お話を抜粋したもの。昨日書斎?の中からある本を探そうとして大騒動をしていて、久しぶりに見つけたので引用してみました(目的の本は未発見)。

この話のどこが「精華」なのかよくわかりませんが、こんな話でも抜粋してくるのですから、編輯者のやる気は感じられるではありませんか。

所用。県外?

 

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