令和3年7月23日(金)  目次へ  前回に戻る

間違い探ししてみてください。

本日はスポーツの日。颯爽たるアスリートたちの戦いぶりが楽しみだなあ。

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「旧唐書」李密伝によれば、隋唐の間の群雄の一人、李密のもとにいた単雄信は、

尤能馬上用槍。

尤も能く馬上に槍を用う。

騎馬戦で槍を使うことにかけては、当代随一であった。

後、李密が敗れて唐に降った後は、

降王世充、為大将軍。

王世充に降りて大将軍と為る。

群雄の一人、王世充の方に参加して、大将軍の地位を与えられた。

唐は洛陽攻略のために王世充軍(「鄭」国)とたたかったが、

雄信出軍拒戦、援槍而至。

雄信、軍を出だして拒み戦い、援槍して至る。

単雄信は、軍を率いて唐軍への抵抗戦を展開したが、(大将軍にも関わらず、)最前線に出てきて、槍によって自軍の兵士らを助けていた。

ここに、もう一人、指揮官のくせに最前線に出てきた人がいた。後の唐・太宗、この時点では秦王の李世民である。

単雄信、戦っているうちに、実にきらびやかな一騎士を見つけた。弓を発すれば百発百中である。

「これはいい相手だな」

と槍を抱えて、馬腹を蹴った。

「ござんなれ!」

と、

幾及。

幾(ほとん)ど及ばんとす。

単雄信の槍先が、その騎士を突き刺そうとした、その瞬間―――

かたわらから、いま一人の若い騎士が現れて、

呵止之、曰此秦王也。

呵してこれをとどめ、曰く「これ、秦王なり」と。

「このあほうが!」と単雄信を叱りつけて間に割って入った。そして、

「この方が秦王さまだぞ!」

と怒鳴りつけたのである。

ああ、これぞ、単雄信の親友、この間まで李密のもとにあって、李密とともに唐に降った徐世勣(のちの李勣)であったのでございます。

「秦王・李世民どのか!」

雄信少退、秦王由是獲免。

雄信少しく退き、秦王これによりて免かるを獲たり。

さすがの単雄信も智仁勇並びなしといわれる秦王・李世民の名に一瞬態勢を整えようとした。そのすきに、世民さまはその場から逃げ出したのでございます。

かっこいい!

ところで、

「新唐書」尉遅敬徳伝には、

秦王与王世充戦、驍将単雄信騎直趨王。

秦王の王世充と戦うに、驍将・単雄信、騎りて王に直趨す。

秦王が王世充と戦ったとき、(王世充軍の)勇猛な指揮官、単雄信が、

「あれが秦王じゃ、彼さえ倒せば我らの勝ちじゃ」

と一直線に秦王のところに突入してきたのだ!

それを目にした秦王の親衛隊長・尉遅敬徳(うっち・けいとく)、

躍馬大呼、横刺雄信墜、乃翼王出。

馬を躍らせて大呼、雄信を横刺して墜とし、王を翼(よく)して出づ。

馬をおどらせ、大声で何やら叫びながら駆け寄り、横から雄信をほこで突いて、馬から転落させた。そして、その間に秦王を助けて、からくも脱出させたのである。

と書いてあります。

えー、ゲンダイ(19世紀前半)のわたくし(肝冷斎ではなく、梁章矩先生)が、

按此二伝所述、一事也。

按ずるにこの二伝の述べるところ、一事なり。

考えてみますに、この旧唐書と新唐書の二つの「列伝」に記述されている事件は、一つの事件だったのではないだろうか。

太宗が同じ戦役の間に、二度もそんな危険な場に出るはずないのですからね。ところが、

今演劇者備言徐世勣、尉遅恭。

今、演劇者、徐世勣、尉遅恭に言を備う。

ゲンダイ(19世紀前半)の演劇では、徐世勣と尉遅恭(うっち・きょう。「恭」が名前で「敬徳」が字です)が、それぞれ太宗を救ったという晴れ舞台を演出して、史実だと言い張っている。

たしかに

皆有所本。

皆もとづくところ有り。

どちらも(正史に)根拠があるのではあるが。

「正史」といってもそんな程度なんです。信用してはいけませんね。

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清・梁章矩「浪迹叢談」続談巻六より。

@  英雄たちかっこいい!

A  会話や口語も出てきて迫真性を持つ「旧唐書」と、字数を減らして事実だけを書こうとする「新唐書」の「書き方」の違いもわかって興味深いね。

B  結局のところ、勝者の綴る歴史なんかうそばっかりだぜ・・・。

C  いやー、歴史はこうやって動いたんですねー。経営にも役立てましょう。

などのこともさることながら、演出に騙されずに、冷静に考えよう、ということが大切ですね。

本日のオリンピック開会式、テレビ無いのでラジオで実況中継を聴いてみました。

(以下、やきうのことなんで滅多に言わない本音を言います。)ゲーム音楽はおそらくアスリートにぴったりだったと思いますが、なんでイマジンだ、とか、なんで・・・というのはさておき、日本スポーツ界における「やきゅう」の意義を重視する、というような理由なら他に人選はいくらでもあります。あの三人が軽いひとでないのは理解しますが、あるグループやある方々の恣意があまりに出過ぎてて、ここまでやっても誰にも咎められないと思っているのかと、びっくりしました。

肝冷斎は開催派で、しかも有観客派なんです。びーれて無いので観に行きたい。そして、ほとんどの日本人は、経済効果なんかもうどうでもいいので、はやくオリパラを終えて世界のアスリートのみなさんから預かった肩の荷を下ろしたいと思っている、と思っているのです。が、あの人選には真実「げんなり」した。「このあほうが!」と怒鳴りつけてしまいそうな気分。

ちなみに本日の所用はこちら。こいつらもビーレテで放送してやってください。

雲が多くてブルーインパルスは音だけしかわかりませんでした。

 

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